池や川、海や水たまりに生息する微細藻類は、CO₂を吸収して有用な物質を作り出す力を持っています。研究や技術開発がさらに進めば、CO₂からバイオプラスチックの生み出すことや、環境中の微細藻類を活用することが可能になるでしょう。

微細藻類の「性能」を向上させて石油資源の枯渇を防ぐ

肉眼で見えない小さな藻類にプラスチックを生産させる

池や川、海や水たまりに生息する微細藻類は、CO₂を吸収して有用な物質を作り出す力を持っています。研究や技術開発がさらに進めば、CO₂からバイオプラスチックの生み出すことや、環境中の微細藻類を活用することが可能になるでしょう。

微細藻類の「性能」を向上させて石油資源の枯渇を防ぐ

肉眼で見えない小さな藻類にプラスチックを生産させる

研究によって実現したい未来

地球のあらゆるところに存在する微細藻類

微細藻類は、目に見えないほど小さな単細胞の藻類です。池や川、海はもちろん、水たまりや家庭の水道管の出口など、世界中のあらゆるところに生息しています。赤潮や青潮も微細藻類の仕業です。また、ユーグレナやスピルリナのように栄養価が高く、健康食品として利用されるものもあります。

微細藻類には膨大な種類がありますが、その中にはバイオプラスチックの原料となる有機酸(コハク酸、乳酸など)を生産するものも存在します。微細藻類はCO₂を取り込み、太陽光をエネルギーに変えて生きています。その特性を活かすことができれば、温室効果ガスであるCO₂を原料にプラスチックを生産し、気候変動対策と石油資源の節約を同時に実現できる可能性が広がります。

CO₂を食べてバイオプラスチックを作る微細藻類

CO₂を減らす方法には触媒を利用する技術などもありますが、生物である微細藻類の利点は、条件さえ整えば自律的に目的の物質を生産し続けられる点にあります。機械的なメンテナンスや複雑な化学プロセス、大量のエネルギーの投入を必要としません。さらに、生産の過程や生産後に生じる副生成物も有効活用できる可能性があります。

地球温暖化を防ぐためには、ひとつの方法に依存せず、複数の手段を組み合わせることが重要です。その観点から、微細藻類によるバイオプラスチック生産には、植物由来の生産にはないメリットがあります。実際、コーンやサトウキビを使ったバイオ燃料の生産はすでに実用化されていますが、植物を利用する方法は農地を必要とするため大規模化に限界があり、食糧生産のために必要な土地や水を奪ってしまうことにも起こり得ます。その点、微細藻類は池や川、海などを利用できるため、農地と競合することなく広範囲で育てることができます。植物と微細藻類の技術は共存するため、どちらも発展させていくことが大切です。

いまだ生態に謎の多い微細藻類ですが、研究が進み理解が深まれば、人工的に培養するだけでなく、天然に存在する藻類を産業的に利用できることも視野に入ります。たとえば、赤潮や青潮を単に駆除するのではなく、資源として活用できる未来が考えられます。また、重金属を吸着する性質を持つ微細藻類が天然中に存在すれば、それらを利用して工業排水を浄化できる可能性もあります。

さらに微細藻類の研究が進めば、これまで知られていなかった性質を持ち、貴重な物質を生産する、人間にとって有益な新しい種類も見つかるかもしれません。遺伝子工学によって有用な機能を持たせた微細藻類が効率的な生産方法とともに開発されれば、新たな薬が誕生したり、食糧問題や栄養問題の解決にもつながるでしょう。

こうした技術が発展すれば、未来には次のようなことが可能になるかもしれません。

  1. 水環境を活用したバイオプラスチック生産
  2. 海洋環境の回復と産業利用の両立
  3. 食とエネルギー問題対策を兼ね備えた新たな微細藻類産業の誕生
  4. 赤潮や青潮の対策と有効活用を同時に実現
  5. これまでにない機能を持つ薬や食品を微細藻類で生産

未来につながる現在の技術

現在、CO2を使った微細藻類のものづくりは、生産効率が十分ではなく、まだ社会実装の段階に至っていません。そのため、効率的に目的の物質を生産できる微細藻類の研究が進められています。たとえば、本来は淡水に生息している微細藻類を海水で培養する研究があります。淡水は貴重な資源であるため、海水を利用できれば産業化の可能性が大きく広がります。

また、微細藻類が効率よく生産活動を行うためには、原料となるCO₂を大量に供給する必要があり、CO₂を集める技術の開発も同時に進められています。温暖化の原因とされるCO₂ですが、大気中の濃度は約0.04%に過ぎません。このため、なるべく低いエネルギーでCO₂を濃縮・回収する技術の確立が微細藻類の生産効率向上に直結します。

さらに、微細藻類が生産するバイオプラスチックやバイオ燃料が、現在の安価な石油由来製品に置き換わるためには、長期的な開発期間が必要です。そのため、研究開発の途中でも収益を確保できるビジネスモデルを築き、開発を継続しながら実用化に近づけようとする取り組みも進められています。