
遺伝子や腸内細菌、体内時計などを科学的に解析し、AIがビッグデータを活用して個人に最適な食事やタイミングを提案する研究が進んでいます。体質に合った食事を楽しみながら健康を維持できる未来が期待されます。
メタボの問題を体質の研究で解決
遺伝子×腸内細菌×AIが拓く個別化栄養学で、楽しみながら健康に

遺伝子や腸内細菌、体内時計などを科学的に解析し、AIがビッグデータを活用して個人に最適な食事やタイミングを提案する研究が進んでいます。体質に合った食事を楽しみながら健康を維持できる未来が期待されます。
メタボの問題を体質の研究で解決
遺伝子×腸内細菌×AIが拓く個別化栄養学で、楽しみながら健康に
研究によって実現したい未来
不足の栄養学から過剰の栄養学へ
これまでの栄養学は、不足しがちな栄養素を補うことを目的として発展してきました。そのため、集団を対象とした一般的な食事ガイドラインをつくり、それを個人に当てはめる方法で十分に対応できていました。しかし、現代は飽食の時代となり、メタボリックシンドローム(メタボ)や生活習慣病など「栄養過剰」が大きな課題となっています。この問題には個人差が大きいため、集団を対象にしたガイドラインでは効果が出にくく、生活習慣の改善や食事制限などの方法も、我慢が必要なため長続きしづらいという現実があります。
そこでいま注目されているのが「体質」の研究です。体質が人によって違うことは誰もが実感していると思いますが、それがどういう原因で異なるのかは、これまであまりわかってきていませんでした。それが近年の研究によって、徐々に明らかになってきています。
腸内細菌や体内時計も「体質」に関係する
従来から指摘されてきた遺伝子の影響に加え、腸内細菌の構成が体質に大きく関わり太りやすさや代謝が変わること、体内時計の個人差によって食べる時間の違いが代謝や体質を左右すること、さらには遺伝子のスイッチのオン・オフを担うエピジェネティクスの違いも影響することが示されています。こうした研究がさらに進み、AI、コンピューター技術、ビッグデータ解析が高度化すれば、膨大なデータを統合的に解析することで、個人の体質に適した食事内容や食習慣を導き出せるようになるかもしれません。

将来的には、ウェアラブル機器が測定した生活習慣や体内モニタリングのデータ、腸内細菌・遺伝子などの情報などから、AIがその人だけの食事メニューや食べるタイミングを提案する世界が考えられます。無理なダイエットや我慢をしなくても、好きな食事を楽しみながら自然と健康になれる未来が訪れるかもしれません。
食事は生きるために必要な行為ですが、それだけでなく「楽しみ」の時間でもあります。メニューの組み合わせは多様であり、AIの食事提案は個人の嗜好をふまえたものにすることができます。AIの提案は制約ではなくナビゲーションの役割を果たし、仮に食べすぎてしまっても、カーナビが最適なルートを再提案するように、健康へ戻るための道筋を示してくれるでしょう。嗜好も含めた個性を尊重しながら、楽しく自然に健康へ近づける未来が期待されています。
このような研究が発展すると、次のような未来が考えられます。
- 遺伝子・腸内細菌・体内時計などを組み合わせて、その人だけの代謝や体質が自動的に計算されて見える化される。
- ウェアラブル機器のデータと食事履歴から、数日後の体調や体重変動をAIが予測し、先回りしてアドバイスが届く。
- 嗜好を学習したAIが、好きな料理を減らさずに健康を保つための最適な組み合わせや食べる順番・時間帯を提案し、好きなものを食べながら健康になれる。
- 外食やイベントで食べすぎても、翌日以降の食事と生活リズムをAIが最適化し、自然と元の状態に戻れる。
- 病気になる前に、日常の食生活だけで健康を維持できるよう、家庭レベルでの個別支援サービスが一般化する。
未来につながる現在の研究
近年は、細胞がつくり出す物質などを網羅的に測定する「オミックス解析技術」が大きく発展しています。これにより、臓器の時間帯ごとの状態、腸内細菌が産生する代謝物、遺伝子の使われ方の違いなどを詳細に調べられことができ、栄養がどのように吸収され、体内で利用されるのかをより深く理解できるようになってきました。

また、スマートフォン、スマートウォッチ、スマートリングなどのウェアラブルデバイスを利用することで、活動量、睡眠時間やその質、心拍などのデータを継続的に取得し、これらの情報をもとに、個人の「内臓時計(体内時計)」を推定するアプリなども開発されています。
現状の生命科学は病気を対象とした研究が中心ですが、今後はその手前の段階である「健康な状態を維持するための個別化栄養学(プレシジョン栄養学)」が発展することが期待されます。個々人に最適化された栄養学が広がれば、人々が健康になり、自分らしく幸福に過ごせる未来につながっていくでしょう。

